カミングアウト失敗談【後日談2】
後日談1で書いたように、私は一切合切「彼にADHDについての理解を乞う」事を封印し
困り事が生じた際は、
- 特性を具体的に伝えながら対策を考える事
- 彼からの要求にも答える姿勢を持ってスタートラインに立てる(対等に話し合いが出来る)よう努める事
この2つを意識して過ごすようになった。
どんな変化があったか
まず一番大きな変化は【自分側】にあって、結論から言うと、精神的に楽になった。重荷が降りた、と言うか。
順番とか動機はおかしいのかもしれないけど、やるだけやって駄目だった経験をした上で
「スタートラインに立つまでは分からせる努力を“手放す”」
ことを決めた訳だから、悩む必要がなくなった。自分の意志で「あなたに理解を強要しないよ」と選んでいる訳だから、同じ“分かってもらえていない状況”でも少し余裕ができる。
その分溜め込んだモヤモヤや日々の弱音は、Twitterとツイキャスで聞いてもらって発散するようになった。(聞いてくれている皆様、いつもありがとうございます🙇)
Twitterは、私の場合フォロワーさんは「当事者側」の人が圧倒的に多いから、モヤモヤを発信すると励ましてもらえたり、共感してもらえる事も多かったりした。ありがたや。
少しの余裕と承認があると、それまではね除けていた彼の声に耳を傾けられるようになった。(まあ喧嘩やトラブルが無くなった訳じゃないけど)
彼側の気持ちに気付き始めた
そんなこんなで、ここ2年くらいの間にはっとしたエピソードが2つ。
【エピソード1】
付き合って4年くらい経った頃かな。
私は頻繁に何かをぶちまけたり、落として割ったりしまくる。すこぶる騒がしい。
付き合い始めの頃は心配してくれていた彼が、いつしかこちらに見向きもせず「片付けといてね~」位の言葉しか発さなくなった。
なんか、心配されてないみたいでかなしいな~みたいな事をぼそっと言ってみたら、彼から驚きの返答が。
彼からの返答を要約すると、こう↓
- これは自分なりの自分を守る術なんだ
- みっちゃんは信じられないような頻度で、信じられないような事をやらかす。
- 都度、真正面から対応していたら自分がイライラしてしまうし疲れるし耐えられない。
- 一時期、自分がおかしいんじゃないかとさえ思えてきて、本当に悩んだ。
- どうすれば無理なく一緒にい続けられるか自分なりに考えた結果がこれ。
- 一々動じない、一々受け止めない、一々驚かない、と決めて流せるようにすること。
- そうでもしないと自分が参ってしまう。だからこうすることにした。
…と。
なにそれ、そうだったの!?!?目から鱗だった。全く気付いていなかった。
何も考えてないように見えて(と言うか、私が勝手にそう思っていただけで)彼は彼なりに悩んで、軽くカサンドラ化して、それでもなお一緒にいるために自分なりに対処法まで身に付けてくれていた。
正直、驚いた。
そして申し訳なく思った。
悩ませていたのは私のせいだ。もっと何でも要領良くできて、あらゆる事を“普通”にこなせる人が相手だったら、抱かなくて良い悩みだったのかもしれない。
そんなこと露知らずで「分かってくれない!!」って勝手に憤っていた。
自分は、そっちの事理解しているのに!って思っていたけど、そんな事は微塵も無かったらしい。素直に、悪かったなって思った。
【エピソード2】
私が職場で部署異動が決まり、次の部署へどんな風に障害特性を伝えたら良いのか…って話をポロっとした際に
障害を伝える事自体は悪くないけど、
信頼獲得しないうちに伝えると「特別扱い」して欲しいって捉えられて、初めから面倒な人認定されてしまうリスクもある
伝える「時期」はよく考えた方がその後のためだとは思うよ
って彼から言われた。
私は「いやいや、特別扱いして欲しい訳じゃなくて、仕事でトラブルを起こさないように事前に手を打ちたいのを、周りをイライラさせない事を目的に知っておいて欲しいから!それだけ!」
って反論したけど、更に
「そういう精神的なフォローも含めて“特別扱い”には変わりないよね?それ自体が悪ではないけど、自分も結果出さない(もしくは、何かしら自助努力しようとしない)ままお願いします!から入ると、よく思わない人もいないとは言えないよ~」
「みっちゃんが長くその部署で働いて、自分を守っていくために、勢いだけで決めない方が良いこともあるんじゃない」
と返されて、私「…(たしかにそうだな)」と。
このエピソードで気付いたのは、
- 彼は何も考えていない訳ではなく
- 彼なりに「障害をどう伝えるべきか」云々の考えを持っている
- それが私の考えとベクトルが違うだけ
- 彼は障害について話す事を全否定している訳ではない
この辺のこと。
こんな風に、彼なりの葛藤や持論について、少しずつだけど気付く機会が増えていって。
「私は、定型である彼を理解できていない」
ふと気付いた。
ずっとずっと
「彼が分かってくれない」
「障害を理解して欲しい」
「彼に知識を持って欲しいい」
彼にばかり求めていたけど
お前はどうなんだ?
私だって、定型である彼のこと、微塵も理解できていないじゃないか
こんな自問自答が、頭の中をぐるぐるするように。
私と彼の違いは「診断が付いている/付いていない」くらいであって、そもそも立場は対等であるはず。
彼は恋人だけど、親でも支援者でもない。
それなのに何故「障害を理解してくれないのはひどい!」「寄り添ってくれるはず!」って所からスタートしていたんだろう。
診断名がある人だけが、理解を得るべきなんて考えはおかしいし
何なら本来、世の常識に近しいのは彼の方で。私の出来なさや、ぶっとび行動ゆえに、彼は困っているだけ。
先に歩み寄って感謝しなきゃいけないのは、私の方だったかもしれない…
こんな、ごくごく当たり前のことに気付いてハッとするまで、診断から3年、カミングアウト失敗から2年くらいかかったかもしれない。
スタートラインに立たせようと思って始めた行動変容を通して、一番スタートラインから離れていたのが、誰でもない自分だったことに気が付いた。
だから、分かってもらえなかったのか…
そんなこんなで、彼の思いに触れた話と、私の中での心境変化についての話でした。
その間の2年間くらいで、彼の期待(不満?)に答えるべく色々と、具体的な行動を変える対策も同時進行で取入れ始めたわけなんだけど、
それも書くと膨大な量になるから、その辺はまたいつか「ADHD対策」として別記事を書きたい。
次、後日談3で3年後の今、彼と私がどう変わったかと、カミングアウトについての持論まとめみたいな事を書いていけたらいいな。ではまた。